エネルギー源とならなかった中性脂肪の行方
食品に含まれる脂肪の大部分は中性脂肪で、からだを動かすエネルギー源として使われます。
食物として摂った脂肪が小腸で分解・吸収され中性脂肪になる場合と、摂り過ぎた糖質が、肝臓で中性脂肪に作り変えられる場合があります。
余った部分が皮膚の下について皮下脂肪、内臓のまわりについて内臓脂肪となります。からだの脂肪の9割が中性脂肪からなり、ダイエットの対象になるのもこの中性脂肪です。
中性脂肪はエネルギー源となるほかに、体温を一定に保つ働きや、皮下脂肪として外部からの衝撃を受け止め、内臓を守る働きをします。そしてエネルギーが不足すると、あらかじめ蓄えられた中性脂肪は脂肪酸とグリセロールに分解され、脂肪酸は各臓器のエネルギー源に、グリセロールは肝臓のエネルギー源に使われます。
中性脂肪は増えすぎるとなかなか分解できなくなり、エネルギーに使われない中性脂肪が悪玉コレステロールを増やす結果、動脈硬化や虚血性心疾患をおこすようになります。
生命維持に不可欠なコレストレール
一方、コレステロールは中性脂肪とともにからだの脂質の一種ですが、主にからだの細胞膜やホルモン、胆汁酸(脂肪の消化吸収に不可欠)を作る材料となっています。
しばしばコレステロールは血管壁に染み込んで動脈硬化をきたす最大の元凶といわれますが、あくまで過量になった場合が問題であって、もともと生命維持に不可欠な物質なのです。
また、からだが1日に必要とするコレステロールは1~1.5gですが、そのうち食べ物から摂取されるものは約3割に過ぎません。残りの7割は糖質や脂肪酸を材料に、主として肝臓や腸粘膜などで合成されているのです。
ところで、中性脂肪やコレステロールは脂質ですからそのままでは血液中に溶けません。そのため、これらの脂質を包み込んで血液に溶け込むようにしているのが、アポリポタンパクという脂質の運び人です。
理解しやすいように、肝臓から全身に向かってVLDL(超低比重リポタンパク)という運搬車が出ていくと思ってください。
車の荷台はリン脂質と呼ばれ、そこには中性脂肪やコレステロールが積み込まれています。荷台の上には、二人の配達人(アポリポタンパク)が乗っていて、Cさん(アポリポタンパクC)が、中性脂肪を荷台からおろして注文を受けた組織へ配達して自分も下車してしまいます。
それに伴い、荷台の上はコレステロールが大部分を占めるようになり、からだの末梢組織に到達すると、配達人Bさん(アポリポタンパクB)も、コレステロールを荷台から降ろしてLDL(低比重リポタンパク)となり、一緒に各組織へ運び込まれていきます。
悪玉コレステロールの正体
このLDL(低比重リポタンパク)が大量になると、からだの血管壁にコレステロールが染み込んでいくため、動脈硬化が進んでしまいます。このため、LDLを「悪玉コレステロール」と呼ぶようになったのです。
一方、末梢組織で隅々の血管壁に溜まったコレステロールを抜き取って肝臓へ運ぶ働きをするのが、HDL(高比重リポタンパク)です。動脈硬化の防止につながるため、「善玉コレステロール」と呼ばれています。
つまり、悪玉、善玉といっても、コレステロールそのものは同じもので、それを包んでいるリポタンパクの種類が違うだけなのです。
またコレステロールを減らすには、減食するほか、卵、肉、乳製品を摂り過ぎないようにし、オレイン酸(オリーブ油、ナッツ、アーモンド)やαリノレン酸(青魚、亜麻仁油、菜種油)とともに食物繊維をしっかり摂るようにします。