光合成によって植物や藻類から生産された有機物が海底深く堆積し、出来上がったのが石油といわれています。この何億年もかけてつくられたバイオ燃料を、藻類を使ってわずかな期間で造ろうというのです。
つまり藻類バイオ燃料とは、藻類を原料として造られたアルコール燃料や合成ガスのことです。
化石燃料である石油は早晩枯渇すると予測されているため、バイオ燃料は車や航空機の輸送用燃料の代替燃料として期待されているのです。
2005年、石油価格が高騰した結果、トウモロコシやサトウキビなどの穀物を原料としたバイオ燃料の研究開発が進みました。しかし逆に食料価格の高騰を招く結果となり、この計画は頓挫しました。
生産量の多いバイオ燃料の原料
そこで穀物以外のバイオ燃料の原料として生産量の高い藻類が注目されるようになりました。以前から
ボトリオコッカスなどの藻類が光合成によって重油を作ることは知られていましたが、生産効率が悪いため放置されていました。
しかし研究開発が進んだ結果、藻類によってはオイル生産量が穀物の数十倍という成績を示すようになりました。
2010年 、新エネルギー・産業技術総合開発機構は、海上で海藻を養殖し、洋上にバイオエタノール精製プラントを作り、海藻から年間2,000万トンのバイオエタノール(我が国のガソリン消費量の3分の1)を作るという計画を立てました。生産効率のよい海藻として、ホンダワラが最も推奨されています。
それでもまだ現段階では生産コストが原油価格に及ばず、いかにコスト削減に成功するかが今後の課題です。
太陽光を必要としない重油産生
また同年、筑波大学渡邉信教授らが、太陽光を必要とせず光合成なしに有機物から重油を産生するオーランチオキトリウムを発見し、油の生産能力がきわめて高いことから、一躍注目を集めるようになりました。
とくに渡邉教授は、藻類「オーランチオキトリウム」と「ボトリオコッカス」を用いて排水処理とオイル生産を兼ね備えたシステムを開発しました。
「オーランチオキトリウム」はオイル生産効率の非常に高い藻類(ボトリオコッカスの10倍以上)で、増殖が速いうえに光合成をおこなわないため、陸上で生ごみや下水などの有機排水からオイルを生産したあと、残りの処理水に光合成をおこなうボトリオコッカスを注入するとさらにオイルを生産でき、しかもその残りはメタン発酵に利用したり家畜の飼料にできるというのです。
現在、渡邉教授らはこの培養システムの確立に10年計画で取り組んでいます。
さらに2011年、京都大学村田幸作教授は日本で採れる海藻の大半を占める褐藻類の主成分・アルギン酸から、特殊な細菌をつかってバイオエタノールを生産することに成功しました。
いずれも極めて実現性の高いテクノロジーで、将来への期待が大いに膨らみます。