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医の倫理

ドミノ移植

ドミノ
我が国では「ドミノ」とは、ドミノ牌を次々に倒していく心地よさを楽しむ遊び「ドミノ倒し」を意味しますが、「ドミノ移植」とは、臓器移植を受けた患者から要らなくなった臓器を取り出し、それを別の患者に移植する手術法を指しており、ドミノ倒しのような手法からこの名がつきました。

たとえば、ドナーA氏の心肺を患者B氏に移植する場合、B氏は肺だけが問題なので、A氏の健康な心臓は心臓に障害がある患者C氏に移植し、C氏の心臓は使えなくても大動脈弁は使えるので、それを患者D氏に移植する。

このようにドナーの臓器を無駄のないように利用しようとする方法です。

我が国では臓器移植に対する世間の関心がもうひとつ盛り上がらず、慢性的な臓器不足の状況にあるため、僅かでも利用できるものは使おうという考えから、このような移植術が試みられているのです。

その結果、1999年にはじめて、家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP)の患者さんから摘出した肝臓を第2、第3の肝臓病患者さんに移植するドミノ肝移植が実施されました。

FAPの肝臓は有害なトランスサイレチンを産生するため、20年以上たつと他の臓器を傷めてしまいます。

このためドミノ肝移植は、比較的高齢で早く肝移植をしなければ命にかかわる場合や、もう一度移植を受けるまでのつなぎ目的などが適応になると思われます。